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レッドゾーン

文庫本

レッドゾーン〈上〉

レッドゾーン〈上〉

[出版社]
講談社文庫
[発売日]
2011年6月15日
[ISBN]
978-4-06-276992-1
[価 格]
724円(+税)
amazon/レッドゾーン〈上〉
レッドゾーン〈下〉

レッドゾーン〈下〉

[出版社]
講談社文庫
[発売日]
2011年6月15日
[ISBN]
978-4-06-276993-8
[価 格]
724円(+税)
amazon/レッドゾーン〈下〉
あらすじ
マカオでカジノに興じる鷲津政彦の元に、中国国家ファンドの要人が接近してくる。日本最大の自動車メーカー・アカマ自動車を買って欲しい――。莫大な財力をちらつかされながらも、相手のオファーを一蹴する鷲津。しかし、中国の魔の手は、着実に日本屈指の優良企業に迫っていた。当初は、単なる威嚇行為程度にしか考えていなかったアカマ自動車社長室長大内に対して、上海の若き買収王が攻撃を開始。大内は、徹底した防衛策を巡らせるのだが……。
一方、大企業での企業再生に疲れ始めた芝野の元に、かつての恩人の訃報が届く。そして、未亡人から恩人の中小企業が瀕死の状態にあることを告げられる。
単行本
レッドゾーン〈上〉

レッドゾーン〈上〉

[出版社]
講談社
[発売日]
2009年4月23日
[ISBN]
978-4-06-215133-8
[価 格]
1,700円(+税)
amazon/レッドゾーン〈上〉
レッドゾーン〈下〉

レッドゾーン〈下〉

[出版社]
講談社
[発売日]
2009年4月23日
[ISBN]
978-4-06-215434-5
[価 格]
1,700円(+税)
amazon/レッドゾーン〈下〉
作者の思い
仮説が現実に変わる時

いずれ中国資本に、日本の一流企業が買収される日がやってくる――『レッドゾーン』の執筆準備を始めた2007年秋の時点では、関係者からは「ありえない」仮説のようにしか捉えられていませんでした。ただそれまでの『ハゲタカ』シリーズでも、執筆当初「そんなことは起きない」と言われた買収が現実に起きたケースもあったため、否定的な意見は執筆意欲をかき立てる発憤材料でした。
もっとも、非現実的といわれる設定を小説の中で「起こりうる」出来事に変えるためには、現実化する可能性を探る必要があります。本作の取材は、その条件探しに大半の時間を費やしました。

何より驚いたのが、私自身が中国経済についていくつも勘違いしていたことでした。
『レッドゾーン」の前に『ベイジン』という北京と大連周辺を舞台にした小説を著し、その際延べ一ヶ月近く中国で取材を敢行しました。そのため、それなりに中国の実態は理解できていると思い込んでいたのです。しかしさにあらず、取材をすればするほど、私が常識だと思ってた事実は翻されていきます。その結果、中国資本が日本の一流メーカーを買収するための条件のハードルが高くなるばかりでした。
もうこれ以上取材をしてもダメかも知れないと思い始めた時でした。一見否定的に思えた事実を並べて眺めていくと、そこに可能性が潜んでいるのが見えてきました。そして、最初想定したスキームとは異なる別の(おそらくはもっと面白い!)構図が浮かび上がってきたのです。
そして、単行本から刊行されて二年余り。その間、中国資本が日本の一流企業を買収するニュースが、何度か新聞紙上を賑わしました。また、日本ではありませんが、外国の名門自動車メーカーがいくつも中国に買収されたのはご承知の通りです。

さて、イン☆ポケットでは、『ハゲタカ』シリーズからスピンオフした『ハーディ』を連載しています。この作品は、『ハゲタカ2』と『レッドゾーン』の間に生まれた空白の時間を、シリーズヒロインである松平貴子の視線から描いてみようと始めたものです。同時に、鷲津にとって掛け替えのない盟友であったアラン・ウォードの死の鍵を握る謎の女・美麗を登場させ、『レッドゾーン』の世界に別の光を投じられたらとも思っています。
三年がかりで続いた連載もいよいよ佳境です。これからの展開にもご期待ください。
3月11日に起きた東日本大震災により、日本経済は未曾有の打撃を受けています。これは外国資本から見れば、「おいしい時代」の到来となっているようです。外資に日本企業が買収されることは、必ずしも悲劇ではありません。しかし、それによって従業員や顧客が不幸になるような買収であってはなりません。そういう意味で、我々は守るべきものが何なのかを考える時に直面しているのかも知れません。
最後に、『ハゲタカ』シリーズの今後についてお知らせがあります。来年の早い時期の連載スタートを目指して、現在『4』の準備を始めています。
次回は、リーマンショックとマジテックのその後を描ければと思っています。

〈「IN★POCKET」(2011年6月号)掲載〉

主要参考文献一覧(順不同)
  • 浜田和幸『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠―暴走機関車・中国の世界覇権戦略』(祥伝社)
  • 小森正彦『国富ファンド・ウォーズ―「彼ら」は日本で何をしようとしているのか』(東洋経済新報社)
  • 芹澤和美『マカオ・ノスタルジック紀行』(双葉社)
  • 中川威雄『図解 金型がわかる本』(日本実業出版社)
  • 吉田弘美『トコトンやさしい 金型の本』(日刊工業新聞社)
  • 森重功一『図解入門 よくわかる 最新金型の基本と仕組み―三大金型を中心に学ぶ、金型のイロハ―日本製造業を支える金型の基礎知識』(秀和システム)
  • 長山勲『自動車エンジン基本ハンドブック―知っておきたい基礎知識のすべて』(山海堂)
  • エンジンテクノロジー編集委員会編『自動車エンジン要素技術Ⅱ―進化を続けるテクノロジーのすべて』(山海堂)
※他に新聞、経済誌、週刊誌、インターネットサイトからも情報を得た。